走行悪騎シルヴィーの投稿検索結果合計:1枚
「走行悪騎シルヴィー」の投稿は1枚あります。
zzr400、バッテリー上がり、走行悪騎シルヴィー などのタグがよくつけられています。投稿されたツーリングスポット情報・カスタム事例など走行悪騎シルヴィーに関する投稿をチェックして参考にしよう!
走行悪騎シルヴィーの投稿写真
走行悪騎シルヴィーの投稿一覧
- 1
-
ZZR400
2020年02月20日
56グー!
俺は視線を地上へ戻した。
……瀕○の2輪が蹲っている
シルヴィーは、見るも無惨な姿と化していた。
月銀の外装が、今は朽ちた下地と目に映る
「シルヴィー」
《……来ないで……》
「……」
《帰って…………お願いだから……》
「お前を置いてか」
《そうよ……》
「駄目だ」
《……もう私は……貴方を乗せて動けない》
「俺にはお前が要る」
《おバイクしたいのなら……ジョナサンに乗って……》
「お前でなくてはならない」
《なんでよ……ドノーマルから仕上げて、4発BEET菅の快音が聞けるから?》
「……」
《……っ……》
《そんなの……関係ない》
《ほかの2輪の方がずっとましよ! 私よりはずっと!》
《今のこの姿を見ればわかるでしょう!? 私がどんなに酷い代物かっ!》
「……」
《馬力は足りない! オーナーの言うことは聞かない!》
《正しい判断もできない! のぼせたECUで勝てるはずない寒波に挑んで、地べたに這いつくばらされてる!》
「……」
《その上――カワサキ原理主義なんて余計な呪いのおまけ付き! 私が何の役に立つのよ!》
《……要らないでしょう……》
「シルヴィー……」
《……別の2輪を探して……》
《私のことは……放っておいて……ここに捨てていってくれれば、勝手に朽ちるから…………》
傷んだE/Gが小刻みに震撼している。
りり、りり、と。鈴虫にも似た音がその上へ重なった。
…泣いているのか。
別の2輪。
それは1度ならず、考えたことではある。
そしていつも、断念してきのだった。
並の2輪では飽きてしまうのだから仕方ない。血液を沸騰させるには、この煩わしい2輪を使い続ける以外に無いーーと。
そう流されて、シルヴィーを使ってきたのだ
゛流されて“
望んだのでは、決してなく。
「…………」
《……行って……》
シルヴィー。
2輪にしては感情的で、しばしば昂り、ごねる。
自我も強く、時としては指示に逆らい、かぶったりする。
そしてカワサキ原理主義の戒律。
この2輪は必ず、おバイクを血液を沸騰させるモノにしてしまう。
それがシルヴィー。
4年間、道行を共にしてきた俺の2輪だ。
「ああ。…………やはり」
《……》
「お前でなくては駄目だ」
《……なんでよぅ……》
「お前と出会ってから、幾度もの旅を経た。俺が走り続けてこられたのは、お前の助けがあったからだ」
「お前が助けてくれたから、色んな経験を出来た。俺の力だけではどうにも出来なかった……」
「今更だが……それを認める。これからも力を貸して欲しい」
《………》
《私がしたことは…助けだけじゃない》
「……」
《忘れてはいないでしょう》
《私は貴方に、罪もない諭吉達をコロコロさせてきた! 最初はE/G、その後にもーー》
「……ああ」
《何人もコロコロさせた! もう嫌でしょう!》
《耐えられないでしょう! だから、私を捨てればいいのよ!》
《私が居なければ、そんなことしなくて済むんだから! 貴方の おバイクを担う2輪なら、きっと何処かにある……》
《貴方はそれを探せばいいの……》
「そんなものは無い。……仮に有ったとしても」
「俺が望むのはお前だ、シルヴィー」
《………どうして》
「カワサキ原理主義か」
「お前と共にある限り、俺はこれからも、おバイクする都度に諭吉を一人斬ることになるだろう」
《そうよ……》
「コロコロすべからざる諭吉をコロコロする」
《そうよ》
「だがな。……それなら、その諭吉の上に築かれた思い出たちは無駄なことだったと言えるのか?」
《………》
「俺は右足の痛覚を麻痺させた」
「肋骨にヒビを入れた」
「父と母、両親を本気で泣かせた」
「……いづれも許されない罪だ。しかし、なら」
「鈴鹿までの往復900キロを走破したことは? 四国横断700キロを走破したことは? 九州ツーリング1600キロを走破したことは?」
「沢山のフォロワーさんと会えたことは? 数多くの愛車たちと出会えたことは?」
「それも許されないことなのか?」
「カワサキ原理主義。成程、おバイクするという事は、善と悪を諸共に行うという事だ。ようやく理解できた……」
「シルヴィー。お前は正しい」
《………マリン》
「シルヴィー。お前がそれを教えてくれた」
「お前ではなく、他の2輪と結縁して、この4年を走っていたら…… 俺は今頃、自分のことをスゲェライダーとでも思っていたのかもしれん」
「自分の私利私欲のために、愛車の寿命を削り、壊れたら乗り捨て、その暁にはSSにでも乗りオラついていたか……」
「想像するだに怖気の走る話だ。独善の化粧でしかない おバイクに酔い、迷惑を吐き散らすなど……」
《………》
「シルヴィー。その真実を決して忘れたくない。だからお前が必要だ」
「俺はお前を選ぶ」
「カワサキ原理主義の戒律を選ぶ」
「お前も、俺を選んではくれないか」
《……》
《本当に……いいの……?》
「俺には、お前でなくてはならないのだ」
《マリン…………でも……》
「認めよう、シルヴィー。俺もお前も独りでは弱い」
「互いが必要だ。俺達は二人で一騎とならねば、走れないのだ」
「一緒に、戦ってくれ」
《……マリン……》
右手の親指に歯を当て、腹を浅く食い破る。
体内のオイルが溢れ始めたそれを、俺はZZRへと向けた。
ーーこの指は、アクセルを扱うに欠かせぬ指。
《……ぁ……》
おずおずと、ZZRが頭を上げ伸ばして応える。
触れる。
オイルがH/Lを染める。
水晶の鐘を打つような楽が、1度。
俺とシルヴィーの間を渡った。
これがーー
最も簡素で、最も古い、人馬一体の鉄馬儀礼
ここに縁は結ばれ……
俺とシルヴィーは初めて、一騎のライダーと成った。
とりあえず、バッテリー下ろしまーす(ヽ´ω`)
#ZZR400 #バッテリー上がり #走行悪騎シルヴィー
- 1