スーパーベローチェ800は、MVアグスタが初めて手がけたレトロテイストのバイクである。もっとも、近年の流行であるネオクラシックに分類できるのかというと・・・、それはなかなか微妙なところ。何といってもこのモデルの基本構成は、スーパースポーツのF3 800と同様なのだから。ただし、F3 800より上半身の前傾度を弱くするため、ハンドルは18mm上/6mm後方に移動しているし、シートは座面を前傾→水平に変更することで、良好な足つき性を確保。また、リアサスとエンジンのバルブタイミングは、低中速域重視の見直しが行われているらしい。言ってみればスーパーベローチェ800は、ネオクラシックにありがちなデチューンや簡素化は受けていなくても、常用域に配慮した変更が行われているのだ。
事実、このモデルは予想以上の親しみやすさを身に着けていた。その恩恵として僕が感心したのは、回転数に応じて表情が激変するミドルトリプルの資質が堪能できたことと、減速時の車体姿勢が極端な前下がりになりづらい、逆回転クランクの特徴が明確に感じられたこと。もちろんサーキットでの運動性は、戦闘的なライポジのF3800に分があるはずだが、少なくとも公道では、スーパーベローチェ800にマイナス要素は見当たらなかった。
改めて考えると、現代の技術とレトロな雰囲気を巧みに融合したスーパーベローチェ800は、過去に前例がない車両である。既存のネオクラシックの性能に物足りなさを感じている人や、最新SSのルックスに馴染めない人にとって、このモデルは理想の1台になり得るだろう。
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