セルモーターのオーバーホール方法と注意点
「なんだかエンジンのかかりが悪い・・・」
「セルモーターの調子が悪い気がする・・・」
セルモーターは使っているうちに劣化していきます。オーバーホールを実施して復活させてあげましょう。
しかし、セルモーターはどのようにしてオーバーホールすればいいのでしょうか?この記事では、セルモーターのオーバーホール方法と注意点を解説していきます。
セルモーターとは
そもそも、セルモーターとは何でしょうか?
エンジンを始動するには、ピストンをクランキングさせて、最初の爆発である初爆を促す必要があります。そして、エンジンの始動方式は、手動でおこなうキックと電気の力でおこなうセル方式の2つです。
キックは足の力でピストンを動かして初爆を促しますが、セルは電気の力でピストンを動かします。このとき使うモーターが、セルモーターです。
セルモーターには小型で力強いモーターが使われており、電気を流すことで大きなトルクを発生させます。しかし、メンテナンスを怠るとセルモーターのトルクが低下し、始動のための十分なパワーを得られなくなってしまったり、動かなくなったりします。
キックとセルモーターを両方搭載しているバイクもありますが、ほとんどのバイクはキックかセルのどちらかしか搭載されていません。そのため、セルモーターが故障してしまうとエンジンがかけられなくなってしまいます(※キャブレター車は押し掛けで始動できる)。
始動ボタンを押しても「カチッ」と音はするのにエンジンがかからない場合、セルモーターが故障している可能性が高いです。セルモーターが原因でない場合、リレーやハーネスが故障していることもあります。
セルモーターのオーバーホール方法と注意点を解説
ここからは、セルモーターのオーバーホール方法について解説してきます。手順さえ覚えれば比較的簡単にできるので、必要な工具や部品を用意してDIYメンテナンスにチャレンジしてみましょう。
オーバーホールに必要な部品と工具
まずはオーバーホールに必要な部品と工具を揃えましょう。
このほか、セルモーターの取り外しに工具が必要になりますが、一般的なスパナやレンチ、ドライバーで十分です。なお、セルモーター分解の際にススなどの汚れが出るので、汚れてもよい服装やゴム手袋を用意しておくといいでしょう。
オーバーホールの方法
では、具体的なオーバーホールの方法について解説していきます。
まずは、セルモーターに付いているボルトを緩め、磁石カバー(缶)を外してください。このとき、ドライバーは垂直に立ててボルトを舐めないように注意しましょう。
セルモーターはシリンダー付近に装着されているため、高温によってボルトが固着している場合があります。その場合はCRC556などの潤滑剤を吹き付けて、1日ほど置いてから再度作業しましょう。
次に、内部の部品を磁石カバー、コイルモーター、台座の3つに分けてください。カバーを外し、コイルを引き抜けば3つに分解できます。
無事に取り外せたら、磁石カバーとコイルモーターを掃除します。カーボンブラシが摩耗している場合、削られたカーボンのカスが付着しているため、パーツクリーナーでコイル部分を清掃します(画像の黒くなっている部分)。
コイル清掃の際、ワイヤーブラシも併用するとカーボンカスが落ちやすいです。コイルは元々銅色をしているため、清掃する際は銅色になるまで清掃しましょう。
このとき、ワイヤーブラシで強く擦るとコイルに傷をつけてしまうため、優しく撫でるように清掃してください。
次に台座のネジを外し、中のプラスチック型も外してキレイにしましょう。清掃の際、台座にあるゴムパーツを傷つけないよう注意してください。ゴムパーツは内部に雨水などが侵入しないようにする役割があるので、劣化している場合はラバープロテクタントを塗布して密閉性を上げておきましょう。
台座の清掃が済んだら、カーボンブラシを清掃します。カーボンブラシはコイルモーターに接しており、経年劣化により摩耗します。
画像でいうと、上の台座はブラシモーターが摩耗して短くなったもので、下が新品のブラシモーターです。長さが全然違うことが分かると思います。ブラシが摩耗していた場合は新品に交換しましょう。
最後に、逆の手順で組み付けます。組み立てる際、各所に接点復活剤を塗布しておきましょう。接点を復活させ、今後もしっかりと通電するように表面をコーティングします。ゴム類もしっかりと組み付け、内部に水が侵入しないように気をつけてください。
セルモーターをオーバーホールする際の注意点
セルモーターのオーバーホールは、誤った手順でおこなうと部品を破損させる可能性があるので注意が必要です。また、感電などの危険もあります。以下のポイントに注意して作業しましょう。
カーボンブラシの留め具の向き
ブラシの留め具板がコイルに接触した状態でエンジンをかけると、ショートしてコイルが焼け、セルモーターが死んでしまいます。最悪の場合ショートの影響でメインハーネス他、電装部品にもダメージが及ぶ可能性があるので注意が必要です。
留め具を固定するボルトを締める際は、コイルモーターに接触しない向きで固定しましょう。
カーボンブラシの留め方
カーボンブラシはバネが仕込まれているため、そのままの状態ではコイルモーターを入れることができません。
そのため、カーボンブラシを中心から外側に押し出しておく必要がありますが、手で押さえるのは難しいです。クリップなどで銅線を挟み、押し込んだ位置に固定しましょう。そうすることで、主軸にコイルモーターを挿入しやすくなります。
まとめ
今回はセルモーターのオーバーホールについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
セルモーターは、カーボンブラシなどの摩耗でパワーが落ちてしまいます。エンジン始動に使う超重要部品なので、定期的にメンテナンスしましょう。
セルモーターのオーバーホールはコツさえつかめば簡単にできますので、整備に自身のある方はぜひセルフメンテナンスにチャレンジしてみてください。
本記事は、2020年3月26日の情報です。記事内容の実施は、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。