このRナインTスクランブラーのベースになったRナインTも含め、僕はこれらが大好きである。
縦置きVツインというのは、クランク軸のトルクリアクションによって、加減速で車体が起こされたり寝かされたりと、それなりのクセがあるわけだが、それだけにクランク軸が回っている内燃機関を抱いて走っていることを実感できる。最新型のボクサーだと、トルクリアクションが小さい分、掴み所がないとも言えるわけで、こいつは素のエンジンをリアルに伝えてくれるからだ。
車体もシンプルで素のバイクの印象。バイクに機械馬として向き合うことができるのである。
さて、このスクランブラーだが、標準型RナインTが、トラディショナルな味わいの中にも、フロントを軸にした今日的なハンドリングを思わせることからすると、これはまさにトラディショナルそのもの。
リアサスのストロークが伸ばされ、ゆったりとした乗り心地の中で、リアを主体に走りを感じさせる。そして、寝かされたキャスター角と19インチになったフロントホイールによって、分かりやすい大きなリズムでフロントが追従してくれる。アップライトなライポジで、ゆったりとしたフロントの動きを見守っている感覚である。
国内仕様は、タイヤに純オンロードタイプのミシュラン・パイロットロード4が装着されていることもあって、スクランブラーという意識もなく、昔ながらの普通のバイクのように駆っていくことができる。
気負いなく楽しめて、味わいがあって、快適。そして、何にでも使えるという感じなのである。
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