進化と熟成を続けるバイク界のなかで、特にフラットツインエンジンを抱くBMWは紳士的で、旅を得意とする。そんなイメージを持ってR nineT(以下R9T)と対峙すると、ちょっと裏切られた気分になるかも知れない。簡単に言えば、R9Tはキビキビと走る、モダンなスポーツバイクとしてしっかりと造り込まれているのだ。
空油冷フラットツインとしてはHP2やメガモト以来となるテレスコピック式フロントフォークを採用し、R1200Rと同じエンジン&駆動系を持つものの、軽く小さな外装類をセットしたおかげで、アクセルを開けたときのエンジンの反応も、そのとき車体を右側へ傾かせようとするトルクリアクションも、R1200Rより強く感じる。この挙動は、縦置きエンジン+シャフトドライブというレイアウトでは、避けられない副産物であり、ちょっと古めのフラットツインを経験しているライダーにとっては懐かしくもあるものだ。
もちろんその挙動は、クルージングやスポーツライディングを破綻させるものではない。だが、最新の空水冷フラットツインではクランクとミッションの関係を見直し、ライダーが意識しなければ、ほぼ感じることが出来ないほどに仕上げてられていることも事実である。
しかしここに来て、古典的なBMWらしさをあえて強く出してきたということは、バイクファンに自らの素性をプレゼンテーションしてきたとも考えられる。その理由を想像すると、創立100年に向けてのロードマップにおいて、R9Tを扇の要に原点回帰的モデルを多くラインナップするのでは。そう考えると、今後のBMWが実に楽しみなのである。
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