KTMのRC390に乗っていると、ずいぶん昔に“街の遊撃手”のキャッチコピーで、パリの街中を縦横無尽に走りまくっていたクルマのCMが思い出された。元気でキレがあって、人を振り返らせるスタイリッシュさがある。そして、KTM、それもRC(レーシングコンペティションの略)モデルだけに、イケイケな雰囲気にも思えるのだが、実際の走りはちょっと意外なものだった。
ネーミングから受ける敷居の高さはまったくなく、ライディングポジションも前傾具合は緩め。
エンジンのレスポンスはレーシングライクなものではなく、ホッとできる肌触り。一発一発の力強さよりも、粒が小さいながらも十分なトルクでマシンをグイグイ加速させていく。そして、回転上昇にともなって盛り上がってくるパワー感。想像以上の高回転域の伸び切り感。多気筒エンジンに多い急激なパワーカーブや唐突さはなく、絶えず地に足が着いているかのような加速は開け切る快感をもたらしてくれる。また、シングルエンジンから想像される減速&シフトダウン時の強烈なバックトルクは小さく、臆することなくガウン!ガウン!とペダルを叩き入れてしまってOK。気付けば、なんだかレーサー気分で、走ることに夢中になっている。
それもこれもマシンが持っている懐の深さがあればこそ。もちろん潜在能力はRCの名に恥じないもので、これでもか!と攻め立てたところで、腕に覚えのあるライダーをガッカリさせることもない。とはいえ、そんな気にならずとも、市街地でサラリと乗れるのがなんとも魅力的なモデルなのである。
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