かつてない独創的なデザインとダイレクトな特性が評判となり、またたく間に人気となったヤマハMT-09。そんなMT-09のフレームやエンジンといった基本骨格をベースに開発されたモデルが、『MT-09トレーサー』だ。
ベースのMT-09と大きく異なるのは、存在感あるフロントカウルや、シート、グラブバーなど、ツーリングに適した装備の数々。そして車体を構成するパーツはことごとくエッジの効いた秀逸なデザインで、徹頭徹尾シャープな雰囲気でまとまっている。いかにもヤマハらしいセンスだ。
セルを押すと軽やかに水冷並列3気筒が唸り出す。その鼓動は、ドロドロよりもマルチに近い滑らかなものである。
市街地、高速、ワインディング、フラットダートなどあらゆる状況を走ってみて感じるのは、MT-09譲りのダイレクトなレスポンスをどんな場面でも楽しめるということ。その上で、高速道路では大きなカウルとスクリーンによる高い整風効果を、ワインディングでは2気筒が多いクロスオーバーカテゴリーにおいて圧倒的にスポーティな走行フィールを。また未舗装路面ではMT-09には装備されないトラクションコントロールがしっかりと作動し、ロード寄りのタイヤにもかかわらず、不安の少ない走りを、それぞれ体感することができる。
少ない荷物でスポーティにワインディングを楽しむ。タンデムで高速をロングラン。ハードケースに荷物を満載してキャンプへ。トレーサーは、広く浅くはもちろん、あらゆる状況において走りも充分楽しめる“マルチツール”という表現の似合う渾身の1台だ。
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