ヤマハ自身の予想を上回る勢いで、世界中で好セールスを記録しているMT-09。近年のヤマハの不振を心配していた身としては、それは大変喜ばしいことだが・・・。一方で僕の場合は、市街地や旅先でツーリングバッグを装着したMT-09のオーナーに出会うと、“この人にはMT-07のほうが向いているのでは?”と感じる機会が少なくないのだった。
と言うのも、車名からは兄弟車と思える2台のMTは、実はキャラクター的にはまったくの別物で、乗り手の腕や走る場面を問わずに楽しめる07に対して、09はそのあたりをかなり問うのである。端的に言うと09の魅力をきっちり引き出すには、ある程度の技量と飛ばせる環境が必要で、そういうモデルが大ヒットしていることに対して、僕は何となく違和感を抱いているのだ。
もっとも、07との違いや販売状況を抜きにして考えれば、09は相当に楽しいスポーツバイクである。腕前が万年中級の僕でも、見通しのいい峠道やサーキットなら、驚くほど自由なハンドリングと並列3気筒ならではの爽快感が満喫できるし、同業のエキスパートライダーの中には、史上最高のウイリーマシンと言う人もいる。いずれにしても、既存の日本車とは一線を画する個性を備えているのが09の特徴で、その資質に惹かれるライダーが世界中に大勢いるのは、ある意味では当然だろう・・・とも僕は感じているのだった。
とはいえ、この2台を天秤にかけて悩んでいる人がいたら、僕は必ず同条件での比較試乗をオススメする。そのうえで09を選択する人がいたら、僕はおそらく、ちょっとした羨望のまなざしを向けるだろう。
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