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ツアラーモデルという選択
バイク乗りにとって「ツーリング」特別な過ごし方である
生身を風にさらすことで敏感になる五感
想像力も増し、マインドトリップを楽しむ最高の時間となる
いつも最高の「バイクトリップ」そんなバイクたちの特集である
「ツアラー」にまつわるこれだけの誤解
冷めたコーヒーを前に2時間近く続いた編集部のブレストで活発な意見が飛びかった。まずツアラーという語感からくるものは?「ツアラー」は、ベテランがたどり着くモデル、高価格で高級志向。それらはある意味で羨望と先入観によるものだ、ということがイメージを重ねるなかで浮かび上がってきた。
では乗ってみての「ツアラー」というバイクの本質はどうなのか。豪華に見えた装備は、ライダーが最高のツーリング環境を得るためにあったらいいなぁ、がかたちになっているものばかり。むしろ、この装備や機能をもっていてこの値段は、後からアフターマーケットパーツを揃えることを考えても割安なのでは? と思わせるものだ。
そしてそれらは美しくデザインされあらかじめバイクにインストールされていることも大切なファクターだろう。そして、長いツーリングの途上、その機能の出来具合に惚れ直すことがある。バイクを作るエンジニアがツーリング中に生身の体験として得たノウハウをこのかたちにしたんだなと気づく瞬間だ。顔も知らない技術者と、ライダーとしてのぬくもりを感じるうれしい体験でもある。
だから、荷物が積めてタンデムに便利、高速も快適云々という、平べったい性能評価では新型冷蔵庫の機能選びと変わらないのでは? ならば、日常に「ツアラー」をもっと取り込んで、長期休暇専用特急、なんて先入観を吹っ飛ばそう。そこで、ボクたちは夜のとばりが降りてから平日のトリップに出かけたのである。2台のツアラーはボクたちの小さな冒険心を見事にアテンドしてくれたのである。
夜のツーリングで見せたロングトリップのような充実感
いつもの水曜日が遠出した休日に生まれ変わった、午後9時の海岸線
西に向かう高速道路に駆け上がった2台は快調に移動を続ける。大きな燃料タンクをしつらえたR1200GSアドベンチャーのオンボードコンピュータは、この巡航燃費ならタンクの中身がカラになるまで546kmは走れる、と示している。いったい、そこにはどんな風景があるのだろう。もし走り続ければ夜明け前にはそこにたどり着くはずだ。河を越える長い橋を渡ると、気温が変わった。
1時間も走るとK1200GTのスクリーンにはライトに吸い寄せられた虫の残骸が無数についた。だが大型のスクリーンが幸いし、ヘルメットへの直撃はなく、虫がへばりついた臭いや、思わずグローブで拭ったあとの視界不良に悩むことなく水銀灯の列を追いかけ続けることができる。2台に共通しているのは、平日の昼間、仕事をこなしてから片道1時間ちょっとの場所に向かうことがまったく苦にならないこと。むしろ快感だ。かといって、日常を後ろに吹き飛ばしてしまうほど逃避的でもない。良識と分別をわきまえ、世間で騒がれる「ちょいワル」に変身!というようななりすましではなく、あくまで等身大だ。だから料金所で車の列が長くても、一般道で工事渋滞にあっても平常心でいられる。
そしてたどり着いた海岸線。町の埠頭で夜景を眺めた。斜面に並ぶ温泉宿の窓に明かりが灯る。しかし、休日とは違った時間が流れている。梅雨の晴れ間、こうしてバイクで海風に吹かれるのは、間違いなく至福の時だ。視覚よりも匂いが海を意識させる。この感覚は夜ならでは。
帰路は海岸線沿いに東京へと戻る。休日には渋滞の名所となる海岸線の国道も、平日の夜は快適に流れている。2台のBMWは、高速道路の長距離移動でこそ本領を発揮する、だけではなかったのだ。一般道を1時間走り続けても退屈することがない。エンジンのドライバビリティのよさと、順調な車の流れも味方したに違いない。
昼間と比べて圧倒的に「景色」という醍醐味が少ないぶん、余計にエンジン音、バイクの動きに乗り手の感覚は研ぎすまされる、ということも教えてくれた。200km近い行程をやりすごし、帰宅したわけだが、ツアラーモデルの持つ魅力、実力を充分に味わうことができた。そして、その存在に誘惑すらされている。長期休暇に遠方目指してカッ飛ぶのも悪くない。しかし、日常にツーリングという至福を持ち込むのもまた悪くない。いや、むしろそんな生活パターンのほうが贅沢かもしれない。ツアラーは新しいアクセントを与えくれるバイクなのだ。
ライダー=松井 勉、宮崎 雄司 文=松井 勉 写真=松井 忍
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