クルーザーという二輪カテゴリーには、細分化するといろんなカタチが混在しているその中で、いま世界中で注目を集めているのが、ボバーというスタイルなのだ!
1930〜40年代に米国で流行したダートトラックレースのマシンが、スタイリングイメージの源流とされる。ムダなモノをそぎ落とす手法によってデザインされ、短く切り落とされた前後フェンダーや低めのハンドルを特徴とする。
ヤマハが13年12月に新規導入したボルトシリーズは、「アルティメット・ピュアリー・ボバー(=究極のボバースタイル)」をテーマにデザインされた、総排気量941ccで真正空冷Vツインのエンジンを搭載するシンプルなクルーザーだ。 ボバーとは、一説には都市型のショートライドをメインの使用環境に想定することで、外装を簡素化したカスタム手法のひとつと言われている。近年、本場の北米市場だけでなく世界中でその人気が高まっていて、ボルトはその流行を取り入れている。 シートは低めにセットされ、身長167cmの筆者でも両足が地面にべったり着く。車重は250kg程度なので、けっして軽量なバイクではないが、足着き性の良さから大きな安心感を得ることができる。 ハンドルは低めにセットされ、ステップもクルーザーとしては後ろに位置。これにより、スポーティな雰囲気も演出されている。ボバーの源流がダートトラックレーサーであることを考えると、非常に納得できるライディングポジションである。 エンジンは、スペックだけを見ればやや非力な印象を持つかもしれないが、実際には豊かな中回転域トルクがあり、物足りなさは感じない。乾いたVツインサウンドとともに、多すぎず少なすぎない鼓動感が生みだされ、高めのギアでクルージングしていても飽きない。その一方で、高回転域までストレスなく吹け上がる、軽快で十分に力強いフィーリングも併せ持ち、ついスポーティに操りたい気分にもなってしまう。 エンジンだけでなく、車体も乗り方に対する許容範囲が意外なほど広く、ボバーらしくシティライドしても楽しいが、軽快かつ穏やかなハンドリング特性で、スポーティなライディングまで楽しめてしまう。ただし、さすがにステップを擦るまでのバンク角に到達するのは早い。また、クルーザーにありがちな低速域での嫌なハンドルの切れ込みもなく、速度域を選ばず爽快に乗れる点も、ボルトの長所と言える。 ラインナップは、スタンダードと上級版のRスペック、さらに15年3月からはクリップオンハンドルやフロントフォークブーツなどでクラシックスポーツ系に仕上げたCスペックも用意されている。15年型以降、スタンダードのABS仕様は一度廃止されているが、その他の仕様ではABSの有無が選択できる。ブレーキは、フロントが弱めでリアが強めに効く、いかにもクルーザー的な仕様。車格や性能を考えると、ABS仕様のほうがお薦めだが、新車時で約5万円の価格差が生まれる要素でもあるので、しっかり検討したい。 新登場から3年半が経過していることから中古車もあるが、その数はあまり多くない。新車実売価格との差を考えながら、出物があれば早めの決断をしたほうが良いかもしれない。ちなみに、リッターに迫る排気量でありながら、装備の簡素化によって100万円を切る(スタンダードなら約90万円のメーカー希望小売価格)というのも、ボルトが持つ大きな魅力。デザインだけでなく、価格もムダを排除した感じである。
真正空冷の60度Vツインエンジンを鋼管フレームにリジッド懸架することで、心地よいパルス感を演出。スリムで伝統的なティアドロップ型の燃料タンクや、丸型にまとめられたメーター&テールランプを採用しながら、徹底的にムダが排除されている。上級版のRスペックは、リザーブタンク付きのリアサスペンション、ステッチ入りのシート、切削ホイールを専用装備する。
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