排気量600〜800ccあたりのアッパーミドルは、国や地域、あるいはバイクのジャンルによって、さまざまな立ち位置に変化する。
たとえば欧州では昔から、600ccクラスというのはエントリーモデルとしての役割を担ってきた。初心者やそれに近いライダーにとって、最初の1台というわけだ。メーカーもそれに合うよう、扱いやすくて価格も抑えられた機種を多く投入してきた歴史がある。現在も、4気筒なら600ccが主流だが、2気筒エンジンであればもう少し大きな排気量を含め、この傾向は続いている。
いっぽうで、成長著しいアジア諸国などで考えると、アッパーミドルはハイエンドに近い。これらの国々では、もちろんリッターバイクを乗り回す富裕層も増加しているが、価格がある程度に抑えられたアッパーミドルが、多くの人々にとっては現実的に手が届く最上級車となっている。そして、せいぜい150ccあたりがアッパーだったころと比べれば、このクラスに手が届く人口は増えている。
このようなベースとなるふたつの環境に、近年はダウンサイジングの矛先という役割も加わった。これまでリッターバイクに乗っていた中上級ライダーが、「もう歳だから少し楽なバイクを・・・」と考えたとき、あるいは若くても「重いリッターバイクよりも、自由度が高い機種に乗っているほうが、楽しいバイクライフが送れるのでは・・・」という想いに至ったとき、目を向けるのはアッパーミドル。これ以上小さいと、いくらなんでも物足りないからだ。
そして、このようにいろんな役割を与えられることから、近年のバイクメーカーは、その多くがアッパーミドルのニューモデルを開発することに対してかなり積極的だ。とくに、アジア市場を含めたグローバルモデルという考え方が各社に浸透して以降、ラインアップは増えた。つまりユーザーからしてみれば、いまのアッパーミドルは選びたい放題だ。
国土が狭く、混雑した市街地やクネクネとしたワインディングも多い日本の公道に、アッパーミドルが持つフレンドリーなフィーリングはベストマッチする。大型二輪初心者のエントリーバイクとして、あるいはリッターからのダウンサイジングとしての高いポテンシャルは、改めて説明するまでもないだろう。
以前は、小型二輪クラスの中ではマイナーで、中途半端なポジションに思われがちだったアッパーミドル。しかし、世界規模で市場が大きく動いたいま、アッパーミドルは地味でも消極的でもなく、むしろ流行の最先端を行くメジャー昇格組だ。
欧州向けにリリースされてきた機種の中古を含めれば、バリエーションは本当に豊富。自分好みの1台を探し出して、世界的トレンドとなっているアッパーミドルに乗ろう!