国道410号線、通称久留里街道はクルマの流れがスムーズだった。ダンプの往来が激しいことで知られる房総の国道だけに、流れの悪さ、見通しの悪さを懸念していたのだが、幸いにも心配は徒労に終わった。だが寒い。
房総というと、色とりどりに花が咲き乱れ、青い海が広がる温暖なイメージがある。事実、気候的には暖かい。だが真冬の山間部を通り過ぎる風は、さすがに凍りつくように冷たい。「ダンプの後ろに付いて走ってるほうが暖かくていいかも……」なんて弱音も出てくる始末だ。
君津市域に属す久留里は、平安時代に築城されたといわれる久留里城の城下町として栄えた町。同時に名水の郷としても知られていて、上総堀りの井戸が町に点在している。そんな井戸のひとつに立ち寄り、喉を潤してみる。乾ききった空気のなかを走り続けてきたあとだけに、冷たい水が体に心地いい。久留里の人たちは生活用水として使っているというのだから、なんとも羨ましいかぎりだ。
清冽な水があるのだから当然、酒造りも盛んだ。吉崎酒造は寛永元年(1624年)創業の造り酒屋で、建物にも風情がある。ちょうど仕込みの真っ最中とのことで見学できなかったが、一週間前までに予約すれば蔵を見学できる。もちろん試飲もできるのだが、ツーリング中なのでグッと我慢。
町のシンボルでもある久留里城へ行ってみることにした。駐車場にセローを置き、延々と坂を上っていくこと15分、小ぶりな天守閣に辿り着く。ニノ丸にある資料館も含めて一見の価値があるが、なにより、幾重にも連なる峰嶺を眺望する山城らしい景観に、疲れも吹き飛ぶ。
さらに交通量の少ない国道465号線で養老温泉郷を目指す。旅館が建ち並ぶ一角にある観音橋を歩いて渡り、そのまま弘文洞跡へ。秋には見事な紅葉に彩られる養老渓谷も、冬のこの時期、静寂に包まれていた。同時に、房総半島で山深い雰囲気を味わえたことに、妙に得したような気分にもなっていた。 |