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エリア情報 首都圏エリア 東京都・伊豆大島
週末はツーリング
船のツーリングでワクワク感は5割り増し!
「おお、よく来たね! おねえちゃんひとりできたの? でも、どうせなら昨日なら天気も晴れていてよかったのにねえ」
 大島に着いて、地元の人がかけてくれた言葉がこれ。でも、仕事の合間をぬって休みを取り、フェリーの予約をしていたこともあって、キャンセルってわけにもいかなかった。天気があまりよくないのはわかっていたんだけど……。
「天気はよくなりますかね?」
「そうだね、この風向きだとお日様は望めそうにないけれども、雨はたぶんやむよ」
 よく日に焼けた船着き場のおじさんは、白い歯をニッと見せて、大丈夫という意味を込めて親指を力強くたてた。おじさんの言葉を信じたいところだけど、とうていこの雨がやむとは思えないぐらいの曇天。雨もどんどん強くなってくる……。船の待合い場までグラストラッカーを押していって、そこでしばらく様子を見ることにした。
 大島までは東京の竹芝桟橋からフェリーで6時間ほど。バイクを乗せることのできる船だとそれだけかかってしまうけど、人だけならば現在はジェット船というものがあって、たった1時間ほどで着いてしまう。
 前日の夜中11時に東京の竹芝桟橋を出航したときには、すでに雨は降り出していた。大島に着くのは朝の5時ごろだ。それまで寝て、明日の大島ツーリングの体力を温存しておかないと! そうは思ったけれども、このフェリーというシチュエーションは、いつものツーリングにもましてワクワク感がまったく違う。消灯時間になっても、いっこうに睡魔は訪れない。いつもならすぐ寝られちゃうのに……。そうなると、いつものやんちゃな部分が出てきて、船内の探検にくりだした。
 さっそくデッキに出てみると、雨にかすんだ東京の夜景が遠のいていくのが見える。「明日の朝には雨がやんでいますように……」。自分でもだれにお願いしたのかはわからないけれど、そう心のなかでつぶやいた。 船室は、そのエリアに入ることが制限されている特等室から、みんなで横になって休む2等船室まで分かれている。特等室はシャワーも完備の豪華さ。でも個室を予約してない人たちも使えるシャワー室もあった。しかも、船なのにレストランまであるんだね。トランプを売ってる自販機があって面白かった。売店がないというのが理由らしいけど。
 ロビーには私と同じように眠れない人たちが集まって話をしたり、本を読んだりしている。なんか旅って感じがしてくる。そんなことを感じながらようやく眠りについた。
 朝起きてみると、前夜の願いもむなしく、雨が依然と降り続いていたのでした……。
ゆっくりした島の時間に心がほぐされていく
 明け方大島に到着し、雨宿りをしているうちに、普段の生活ならラッシュを迎えるであろう時間になって、雨もだいぶ小振りになってきた。
 カッパを着込み、グラストラッカーに火を入れる。小気味よいエンジン音が、沈みかけた気持ちをグンとあげてくれた。
 大島は観光しながらでも5時間ほどで1周できる。大島をぐるりと結ぶ周遊道路を南下していくと、さっそく雄大な自然の光景を目の当たりにすることになった。地層切断面だ。まだ朝ご飯も食べていない私としては、自然の織りなす美しさというよりも、バームクーヘンにしか見えなかったところが……。朝から食事できるところがなかなか見つからなくて、お腹がペコペコだったから、ということにしておこう。
 海も山も近い大島は、潮の香りも、むせかえるような緑と土の匂いも感じることができる。どこか懐かしさを感じる波浮の港に着いたころには、朝、岡田港でおじさんが言っていたとおりに雨はやんでいた。
 太陽を燦々と浴びながらのツーリングもいいけれども、しっとりした感じのツーリングもまたオツなもの。むしろ旅情感は増しているような気がする。と、無理やり自分を納得させてみる。いろいろな物が簡単に手に入る都会の生活は便利でいいけれども、ここにはコンビニなど当然1軒もなく、ゆっくりとした時間が流れている。いつも何かにまくし立てられるように日々を生活している自分にとっては、心地いい時間の流れは心の洗濯にちょうどいい。
 いつもなら目的地まで早く行くことばかりを考えてしまうけれども、大島では脇道、脇道へと進んでいく。筆島をより近くに見ることのできる海岸線の道や、三原山へと続く細い森のトンネルを抜けていく道。ちょっとした冒険気分を味わいながら、トットットッとグラストラッカーを走らせていく。普段はGPZ900Rに乗っているけれども、それとはまた違ったバイクの楽しさを感じることができた。速く走ることで見落としてきたものを、このバイクが見せてくれたんだ。そう思うと、なんだかいとおしく感じてきた。
後ろ髪を引かれつつも大島をあとに……
 朝早くから動きまわっていたこともあって、宿に着いて食事をし温泉に浸かったら、あっという間に夢の世界に落ちてしまった。
 翌日、目を覚ますと昨日はなんとかあがってくれた雨も、東京へ戻らなければならない私の心を映すかのように再び降りだしていた。午後1時には船に乗り込まなくてはならないけれども、もう少しこのゆっくりした大島の時間を感じていたい。ちょうど、高田製油所で教えてくれたジャズカフェを思い出した。
 元町港にあるその店内に足を踏み入れると、センスのいいディスプレイと心地よい音楽が流れていた。ふと窓の外をみると、防波堤には見たこともないくらいの高い波が白いしぶきをあげ押し寄せている。
「こんなに高い波で、船は欠航したりしないんですか?」
「これくらいの波は、私たちは波とはいいませんよ。大丈夫です、安心してください」
 オーナーがいった言葉に、この大島で暮らす人々の強さと、優しさの理由がわかった気がした。
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